超巨大ドローンをつくってみた!(その5・最終回?)

 

多忙の為、その4から時間が空いてしまい申し訳ありません。

脚もアルミ製の安心なものに付け替え、数回のテストフライトで飛行の安定感も掴めて来たところで、師匠から「一つの条件で良いからといって安心しちゃーいけないよ!」とまた辛口な一言!

「ホントにその機体が使えるかどうかってのは、場所や風といった飛行条件・搭載重量を変え、どんな時でもちゃんと安定して飛ばないと恐くて仕事じゃ使えないから・・」と

<弊社操縦士が永年手掛けてきた都心密集地での高高度空撮の例>

確かに確かに、さまざまな条件下で機体が常に安定し、信頼のおける代物じゃないと、業務空撮では都会の街中や人に接近しての撮影も多々有りますので、到底使えるものじゃありません! 趣味で河川敷で飛ばしてるのとは訳が数段違います。。

<弊社空撮デモ映像(Youtube)より>

ということで、まずいつもの畑から場所を変え、近隣の町にいくつかあるテストポイントの一つ、山あいにある狭い谷間の田んぼ。「ここはいつも谷沿いに風が吹き込むので、風のテストに向いてるよ」との事で、その日も風速3~5m位の風が時折強くなったり弱くなったりといったテストするには良い条件でした。

超巨大ローターの為、毎回車から降ろしては、一枚ずつローターを8本ネジ止めして、バッテリーを積み、諸設定を確認後フライトです。。

いつものように、慎重に離陸させ2m程の低空でホバリングしながら全体挙動を確かめた後、ピッチ軸(前後移動)とロール軸(左右移動)で10m程移動させては戻し、反応を確かめます。

大丈夫そうなので、序所に高度を10m程に上げて前後移動や左右移動、ピルエット(機首向き)を変えて戻してを繰り返していたその時、やや強い突風が吹きました!

その瞬間、機体のロール軸方向(横方向)から風を受けたのですが、大きく機体は横方向で左右交互に上下を繰り返すいわゆるハンチング状態になり! この程度の風だと普通はジャイロの働きで、大型機でも一二度の左右の揺れで収束させ水平状態に戻すのですが、なかなか収束しません。師匠が当て舵を必死に打ってますが、ハンチングは収まらず、本能的に何とか降ろそうとスロットルを緩め高度を落し、機体の位置が畑の真ん中だったので、固い離陸場所の畦道まで誘導しようと頑張ります、、が、途中でさらに揺れは増幅し最後は3~4mの高さから斜めに畦道上に滑るように落下!! 機体フレーム中央が大きく歪み、ローターも3本破損、内一本は粉々に。。

 

 

<あまりのショックでこの日は現場写真撮るのを忘れておりました>

これまで数回のテストは回を重ねるたびに安定感を増していたので、この突然起こった、一連の挙動で私も師匠も唖然となり、、悲しさも半分、しばし機体の前に立ちすくんでしまいました。。

そして、冷静に風が強くなった瞬間からの挙動を二人で思いだしてゆくと、次のような推論となりました。通常ドローンは風を横から受けると機体の傾きをジャイロでリアルタイムに検知し、反対の風下側のモーターの回転数をリアルタイムに上げて機体を水平状態にリカバリーさせます。

 

しかし、この機体はモーターの最大回転数が低い(KV値170)為、無風時は安定しているが、このように突風が吹くような条件下ではジャイロは検知してその揺れ幅のリカバリー分の信号を出すが、モーターがそれをリカバリーするだけの瞬発的パワーが出ない! という事なんじゃないかと。。

機体もそれなりの重量があるものを、ローター径を単純に大きくしただけでは、ドローンは飛行出来ない! それを操るモーターやアンプもその分の能力が無いとこのような突風が吹く環境下では、バランスを保持出来ないのだろうという私共の推論に至りました。

もう一つ、疑うとすればフライトコンピューターとのマッチング。この機体はメーカーが推奨している、DJI製のA2という、DJI  S1000、S900等で広く使われているフライトコンピューターで制御しておりますが、この機体はX8型と呼ばれ各アームに回転方向が逆のモーターが上下に二つずつ付いている方式。A2にもメニュー内部にこのX8型を選択出来る様になっていますが、そのモーター回転数等の許容範囲がこの機体の場合規格外だったのかもしれません。

ちなみにこの墜落の件につきまして、その後私共から中国のメーカーへ英文でメールによる状況報告とその考えられる原因について、質問を出しましたがこれまで一切返信がありません。

ここに書いた2年半前当時は、ドローンでペイロード3kg以上の大手メーカー既成の大型機はFreefly cinestarとDJI S1000ぐらいしかなく、師匠と私がヘリ時代のようにそれを越えるカメラやレンズを積めたらという思いでこのようなネット上で見つけた、おそらく誰も日本では購入した人がいないであろう機体に希望を傾けた時期でありました。その後Freefly ALTAシリーズやDJI M600といった本格的な4k大型カメラやズームレンズを積める機種が大手メーカーから出てきたことは大変有り難く、私共も即導入して現在まで愛用しております。

ただ、いまだに笑い話で時々話すのですが、、あの機体の筐体はそのままでモーターだけ最近のM600等の高回転・高効率モーターに変えれば、きっと普通に飛ぶでしょ!と。いつかそれもやってみようと話しつつ、忙しさの余り早2年以上経過しております。(終)